女性表象ジェンダー短歌WEB企画 まとめ

書肆珂不賀から刊行予定の女性表象ジェンダー短歌アンソロジー『透明な濁流』の刊行前企画として、SNS上で女性表象で日々を生きることの過酷さや理不尽さについてを詠んだ短歌を募集し、13首の短歌をご応募いただきました!

感想コメントは、書肆珂不賀・編集の井上梓によるものです。企画にご参加いただき、ありがとうございました。

世界中の酸素吸わるる心地する そっぽを向いた背なの高さに 模卵

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世界って、すごく呼吸のしやすい存在とそうじゃない存在があるよね、と思います。高いところでできる呼吸と、そうでない場所からせねばならない呼吸では、肺の膨らみもちがって、(生活できる)体力、というかたちにそれはあらわれてしまうようなきがします。

制服のスカート型にながされたおれを救ってみようかスーツ     ろ〜

ランドセルが黒か赤しかない時代に生まれました。黒いランドセルがほしかったのに、「いじめられる」と言われて赤を買い与えられました。リクルートスーツはパンツしか履かなかったし、腰のくびれていない、お尻を強調しないポケットの大きい「スーツ」を着たい。

「君らしい」そう言われてきたものはほんとは全然「私らしく」ない talia

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「君らしさ」という言葉を使われるときほど、「私」からずれていることがおおくて辟易するんですよね。たとえば「君らしい」と言われて渡されるきゃしゃなアクセサリーとか。自分でえらんだごついシルバーアクセサリーを身につけた「私」が「らしい」のに!

桃色の髪留めひとつで「怪物」の可愛さが担保されると云うの? 匿名

色は身につけるひとを記号化するものではないのに、なぜか社会ではそれがまるで機能するかのように読み取られ、定義づけられていく。勝手にわたしを「読む」な! というもどかしさを感じました。



殖やすことのない腹を携え叩く戸 むらさきの芍薬活けて 藤城まり子

 Bluesky:@marikof.bsky.social

殖やすことを望まなくても、必要としなくても、保有していなくても、それでもその機能が「ある」として見られてしまうこと、そう解釈されるがゆえに望まぬ戸を叩かねばならない瞬間がある。「むらさきの芍薬」の花言葉は、「怒り」「憤怒」なんですね。

知ってさえいれば選ばずすんだのに【そっち】の私は幸せですか? 轟

たどってきた道には、いくつもの分岐があって、けれど分岐点に立ったとき、規範とされる選択があるように思います。えらんでいたら/いなかったら……「もし」を問うとき、【こっち】の私はなにを投げかけ、「【そっち】の私」からどんな言葉がかえってくるのか――。



濁らせる むなもとまぶたみみ手くびゆびなどに咲く我らの声で 山菜おこわ

 Bluesky:@okowasansai.bsky.social

純度の高い世界がある。その純度の高い世界は、ほんとうはいろいろなもの(「純度」を構成している存在はそれを「不純物」と呼ぶかもしれないけれど、実際は「世界」に最初から存在し、世界を構成する要素である)が含まれていることを知っているのに知らない・見えないふりをしている。「我らの声」は、その本当は存在しない純度の高い世界を「濁らせ」てゆく、あたりまえに世界をもどす行為のように思いました。



「良い夫」単身赴任「してくれる」妻の仕事に「理解ある彼」 分相応

 Bluesky:@hexebleu.bsky.social

「理解」の一方通行をつねに感じて生きているなあと思います。妻と夫、その立場や選択が逆転したとき「よい妻」「してくれる」「理解ある」になるんだろうか、とか。

婚姻へのレールを諭す優しげな笑み引き破いて花吹雪散らせ 田淵 

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「婚姻」の矢印は異性でしょう、そしてそれが「正解」である、そう告げる声は「あなたの」「幸福」を「願っている」と優しいふり(というかそれが優しさと信じているまである)をするけれど、そんなものは破り棄てて蹴散らして、祝福の花吹雪をわたしたちはわたしたちのうえに注ぎたい……。

〝女の子〟だからと大事にされるとき、わたしの心はすこしずつ死ぬ nameKo

 Bluesky:@mom1615.bsky.social

パターナリズム~! 悪しき管理~! 〝女の子〟「だから」という理由づけで、「守る」という根拠の薄い使命感でこっちはそぎ取られるものがある……。私事を話して恐縮ですが、季節労働の際、「前半は重いものを運ぶ仕事で、女性の体には負担だから」と、雇用期間を短くされたことがあります。



計算ドリル練習したのは年収の壁超えぬシフト出すためじゃない あつ

「こんな勉強が何の役に立つんだ」と先生に問いかけ、時になじりながらそれでも必死にかじりついていたのは、「自立と選択肢」に辿り着くためであってほしかった。



薄からず濃からず化粧せよと言う自分の金で口紅買えと 岡田一実

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自分の金というとてもプライベートなものを使い、選択するものであるのに、その使い方も選択も、暗黙の指示がある。「察する」ことまで要求されているんですよね……。



女子力だなんだかんだと言う外野散々無視して二死満塁 tiny

野球のルールを知らないので調べました! 「女子力だなんだかんだと言」われている側がいまバットを持っている状況だと読みました。これはヒットを打って、全員をホームベースに返して勝ちたい! きっと勝てる!